最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)237 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人十川寛之助の上告趣意第一点について。
しかし所論引用の昭和二五年(う)七四号、同年五月六日言渡東京高等裁判所判
決(但し言渡年月日を同年五月一六日と記載してあるのは同月六日の誤記と認める)
は、第一審公判において裁判長が証拠調実施前に被告人に対し詳細な質問を発して
自白を求めたことを違法なりとなしたものであるから、本件におけるごとく、第一
審公判において検察官が証拠調実施前に被告人に対し詳細な質問を発して犯行の詳
細を尋ねた案件には適切でない。
しかのみならず、刑訴二九一条による手続が終つて後証拠調に入る前に裁判長が
被告人に対し公訴事実について質問して自白を求めたとしても必ずしも違法である
といえないことは、当裁判所大法廷の判例とするところであるから(昭和二五年(
あ)三五号、同年一二月二〇日大法廷判決)、これを違法と解する前掲の高等裁判
所判決は自然に変更されたものというべきである。それ故、原判決に判例違反あり
となすの論旨が成立し難いことは明白といわねばならない。
同第二点について。
論旨は要する原判決の刑の量定が甚だしく不当であるというのであるが、一件記
録に徴するも原判決を破棄しなければ著しく正義に反するということはいえない。
被告人の上告趣意について。
論旨は縷々として寛大の裁判を仰ぎたいと述べているが、刑訴四一一条を適用す
べきものとは認められない。
よつて刑訴四〇八条により全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和二六年七月一〇日
- 1 -
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
- 2 -